デュクレな人々

「デュクレな人々」記念すべき第一回は、ホスピタリティの生き字引、四方啓暉氏です。

四方氏は「ザ・リッツ・カールトン大阪」設立の担当責任者として、契約・事業計画の策定や人事に7年間携わられ、開業後は副総支配人として、リッツ哲学の浸透の従業員教育、運営体制の確立を支えられました。

「ザ・リッツカールトン大阪」の誘致から建設、開業準備、営業、教育、運営までのすべてに関わって来られた、唯一無二の方と言っても過言ではないでしょう。

御退任後は名古屋マリオット アソシアホテルの常務取締役総支配人、ジェイアール東海ホテルズ専務取締役などに就任され、現在は大学教授として教鞭を執っていらっしゃいます。

「ザ・リッツ・カールトンホテル」が「ホスピタリティの最高峰」と呼ばれるのはなぜか?
医療に生かせるところは?その秘密を伺いました。

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【第一回】四方啓暉氏 

大手前大学現代社会学部教授
ザ・リッツ・カールトン大阪元副総支配人
名古屋マリオットアソシアホテル総支配人
ジェイアール東海ホテルズ元専務取締役

普段の業務内容

現在は兵庫県夙川にございます大手前大学の教員で、その前は名古屋マリオットホテルの総支配人、さらにその前はザ・リッツ・カールトン大阪の副総支配人でございました。

ホスピタリティのお仕事に就いた経緯

私にとってのホスピタリティの仕事というのは、つまりホテルマンになることだったわけですが、そのきっかけは高校生の時、あるラジオ番組でホテルマンという仕事を知ったことです。
それを聴いて大変やりがいのある仕事に思えました。その時からホテルマンを目指して大学も選び、現在に至っております。

現在の業務におけるホスピタリティの実践、提供例

ホテルマンというのは、大きく言いますと地域、文化の発展に寄与できる、ということ。またそれ以上に様々な方々にお会いをして喜んでいただける、そして最も大切なテーマがホスピタリティ、という点で非常にやりがいを感じます。

ザ・リッツ・カールトンにおけるホスピタリティの実践

IMG_5958最も代表的なものとしては「NOを言わないサービス」でしょうね。このフレーズはもう様々なところで使われていますので一般化していますけれども。

いわゆる、お客様のご要望にはできるだけお応えし、しかも働く者たちが喜びを感じながら工夫をしながらやっている、ということがザ・リッツ・カールトンのホスピタリティの背景となっています。

もう一つは、「リッツ・カールトン ミスティーク」があります。お客様から「~してほしい」と言われる前にこちらで推察してご提供するということ。
お客様から「そんなことまでわかってくれているの?」という受け止め方をしていただけるようなサービスを、可能な限りしかも楽しみながら工夫をしながら行っている。

これもザ・リッツ・カールトンを代表するホスピタリティですね。

心が通じたな、と感じた経験、事例

様々ありますが一つ心に浮かぶのは、あるお客様のパーティでのことです。 その装飾についての忘れられない思い出があります。 その方はお年を召された男性のお客様でした。

私たちスタッフからの提案に対して、そのお客様からは全く別の、しかも数多くのご要望があったのです。それで私たちはそのご要望を元にスタッフと 工夫し飾りつけを行ったわけです。

その結果、本当に素晴らしいものが出来上がりました。私たちの努力に対してそのお客様は心から喜んでくださいました。

また、我々も新たな学ぶ機会を頂けました。このことを通じて、次からは言われなくとも我々 からベストなご提案やプレゼンテーションができるようにならなければ、と実感いたしました。

従業員の高い接遇レベルを保つための教育内容

stuff スタッフがこれが良いだろうと思い、やろうとしていることについてはできるだけ支援をしてきました。まずは、彼らの提案を支援し、後押しするようにマネージメントサイドとして心がけておりました。

彼らが取った行動をお客様に喜んで頂いたら、次にもっとできることはないか、もっとやれることはないかと思うようになってくれる。常にそのような行動をスタッフ自ら進んで取るようになってくれました。

具体的な教育と言いますと、まずザ・リッツ・カールトンの理念を学ぶ研修に2日、3日は時間を取りました。ホテルと言えども企業ですので、新たに採用になった方々には弊社の方向性を明らかにしてあげることが大変重要です。

それぞれの方が、このホテルでどのようにやって行ったらよいかを思い描けるようになることが大切なんです。
この職場では何が最も重要なのか、それを理解いただけるように時間を多くとっていましたね。img_844c735c9e9e199603d6d55d71632a3839898
知識、技術はOJT、つまり実務をやりながら各部署の先輩たちがプログラムに沿って伝えて繰り返し教えていました。1年経ちますと「サーティフィケーション」と呼ぶのですが、もう一度基本の再チェックをしてリッツマン(リッツウーマン)としてのレベルが保たれているかを確認いたします。
           

医療機関でホスピタリティを感じた時

幸いにあまり病院に行く機会はないので、多くは経験していないのですが(笑)。

ただ、最近の病院は良くなってきたなと思うことの一つは、診療開始時間よりもかなり早い時間から、職員の方が早く来られた患者さんをご案内されていますね。親切に説明をし、待合の椅子にご案内をして、順番にお座りいただくようお願いしておられる場面を見たことがあります。

診察が始まったら始まったで、一人ずつ付き添って会計の窓口をご案内をしたり。
初めての患者さんは受付が始まるまでどこで待っていたらいいのかとか、順番はどうなのかとか、呼ばれたらどの窓口に行ったらいいのかだとか、まあ、戸惑うことばかりですけれども。

そういうところを非常に丁寧にやっておられる病院があって、随分昔と変わってきたなと思いますね。

病院で困ったご経験

そうですね、ここが終わったら、次にはこの窓口・・・というように2,3か所行かないといけない時に場所がわかりづらい、ということがありました。

それから「これはどうかな」と思ったのは、診察室の扉の裏で診察室があって、手前で患者は待つわけですが、その扉を開け閉めするたびに中の様子が見えてしまう、ということがありました。

扉の隙間から、患者さんの目に触れてはいけないものが見えてしまっている。そこの対応ができないといけないんじゃないでしょうか。

医療従事者へのホスピタリティに関するアドバイス

IMG_5961ホテルに来ておられるお客様の関係と、病院に来られる患者さんとの関係を比べると、患者さんの方がはるかに弱い立場でいらっしゃる。

しんどい、痛い、気分的に落ち込んでいる、不慣れだ、という人たちに対応するのが病院のスタッフの方々ですから、ホテルでお客様に対応する以上に病院で患者さんに対応する方が、対応者の一挙手一投足が敏感に伝わるでしょう。

ちょっとしたことで喜んでもらえるだろうし、ちょっとしたことがダメージになるだろうし、病院と患者様との関係は非常にデリケートな関係だと思います。

だからこそ、病院のスタッフは細心の注意を払わなければいけないし、逆に細心の注意と真心で接したときには相手には普通以上の喜びとなって伝わるし受け止めてもらえるでしょう。

医療というのは、心配りをして対応したことが生きて喜ばれるやりがいのあるお仕事ですが、そうでなければ普通以上にダメージを与えてしまう特性があるということを、働く方々は認識されたらいいと思います。

「こんなことぐらい」というようなことが大きな喜びになったり、大きな落胆になったりということがあるように思います。

医療機関の超多忙な中で、丁寧な接遇はできないという声があります。どのようにしたらうまくできるでしょうか

ホテルで仕事をしている私が思うのは、忙しいからこの程度の仕事しかできないという人は、暇であればこれ以上の仕事ができるかといったらできないものです。
暇な時でも忙しい時と同じ仕事しかできない。逆を言えばきちんとした仕事は忙しい中でもそれなりのことはできる。

確かに「忙しさ」というのは重要なテーマです。マネージメントサイドは人手が足りるように工夫はしなければならないのだけれども、そんな中ででも我々は、やらなければならないことはやらねばならないわけです。忙しさを理由にしてはいけない。
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大切なのは、やれるようにするための工夫を全員で探してゆくことですよね。忙しさが理由で丁寧な接遇ができないというのは、本当にそうなのかなと思います。

スーパーマーケットで商品の場所を尋ねたら、以前は口頭での説明だけだったのに最近はその場所まで必ず連れて行ってくれます。

忙しさは以前と変っていないんですよ。でも、忙しい中でも売り場がわからない人には99%必ず連れて行ってくれるようになりました。以前はできていなかったことができるようになる背景には様々な工夫と努力があったに違いない。
素晴らしいことです。

プロフィール
氏名

四方啓暉

所属

大手前大学現代社会学部教授
ザ・リッツ・カールトン大阪元副総支配人
名古屋マリオットアソシアホテル総支配人
ジェイアール東海ホテルズ元専務取締役

経歴

ザ・リッツ・カールトン大阪設立の担当責任者としてザ・リッツカールトンホテルカンパニーとの相互信頼関係構築、異文化の理解・融合に尽力するとともに、契約・事業計画の策定や人事に7年間携わった。 開業後は副総支配人として、哲学の浸透など従業員教育、運営体制の確立を支え、同ホテルが「ホスピタリティの最高峰」と呼ばれるまでの基盤を築き上げた。退任後は名古屋マリオット アソシアホテルの常務取締役総支配人、ジェイアール東海ホテルズ専務取締役などに就任。
現在は大手前大学の教授として、また立教大学では「ホスピタリティ・マネジメント講座」の講師として教壇に立っており、産学ともに「ホスピタリティ産業」における活躍を志す人材教育に力を入れている。

1946年  2月24日生まれ
1969年  立教大学 法学部 卒業 ・ 立教大学 ホテル観光講座修了
東洋ホテル(現ラマダホテル)宿泊部フロント支配人
1984年  大阪全日空ホテルシェラトン(現ANAクラウンプラザホテル大阪)
宿泊部・宴会部・マーケティング部 支配人
1990年  阪神電気鉄道株式会社 西梅田開発室ホテル事業 “The Ritz-Carlton Osaka”部長
ザ・リッツ・カールトン大阪設立の担当責任者として、ザ・リッツ・カールトンホテルカンパニーとの相互信頼関係構築、異文化の理解・融合に尽力するとともに、契約・事業計画の策定や人事に7年間携わる。
1997年  ザ・リッツ・カールトン大阪  副総支配人
2002年  株式会社ジェイアール東海ホテルズ
名古屋マリオットアソシアホテル総支配人
2008年  株式会社ジェイアール東海ホテルズ専務取締役CS担当
現在    大手前大学現代社会学部教授
立教大学「ホスピタリティ・マネジメント講座」講師

主な著書  『リッツ・カールトンの究極のホスピタリティ』 河出書房新社

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    神戸大学大学院経営学研究科非常勤講師
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    ザ・リッツ・カールトン大阪元副総支配人
    名古屋マリオットアソシアホテル総支配人
    ジェイアール東海ホテルズ元専務取締役