デュクレな人々

大阪のPR会社の大御所、日本三大祭り「天神祭」の影の仕掛け人、伴一郎氏をお迎えすることができました。関西を中心に全国を飛び廻り、超多忙な日々を送っておられます。優しさと親切とホスピタリティの街、大阪のPRを様々な形で提案、企画、広報をされる伴様。ホスピタリティの塊のようなお人柄に誰もが惹きつけられ、相談に来られる方が絶えません。PRというお仕事の中にどのようなホスピタリティが隠れているのか伺いました。

【第3回】伴一郎氏

伴ピーアール株式会社代表取締役PRプロデューサー
公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会理事

普段の業務内容

新聞社やテレビ局といった、マスコミをはじめとするあらゆる所へ記事を書いて送ったり、新聞記者の方にお話をして「実はこういう方が居られるのですが、その人のこういう活動を記事にしてあげてください」と紹介したりするといった中間的な取り次ぐ仕事をしています。

広告代理店の場合は、例えば新聞でなら、紙面の一部を買い取って、300万とか500万といった価格で広告を載せたり、テレビなら15秒のCMを作成するといった仕事になるんですが、PR会社というのは日頃から親しくしている論説委員や記者さんたちに「記事にしてくれませんか?」と作成を依頼します。

また、「水の都」大阪と「商都」大阪と「食の都、食いだおれのまち」大阪という、3つのテーマにおいて大阪を様々な形で伝える仕事をしております。

ホスピタリティのお仕事に就いた経緯

ピーアール会社を起こして30年経ちます。当時は大阪にピーアール専門会社は一社もありませんでした。現在、ほとんどのPR会社は東京で、大阪には数社。そのほとんどはうちから出た会社です。
PR会社と広告代理店は違います。広告代理店で有名なのは「電通」がありますが、広告代理店の場合は、例えば新聞なら紙面の一部を買い取って、300万とか500万、一面なら何千万といった価格で広告を作って載せたり、
テレビなら15秒のCMを作成するといった仕事ですが、PR会社というのは、論説委員や新聞記者に「こんな会社があるのですが記事にしてくれませんか?」と作成を依頼するような仕事です。
お互いの関係を繋いで思いを伝えていくという仕事です。

現在の業務におけるホスピタリティの実践、提供例

伴PR_会議風景 ゼネコンや大手企業や行政などから仕事の依頼をいただきますが、自分のところの会社のトップ、会社そのもの、商品などを一般社会にどういう風に見てもらうか、というような相談なわけですが、その中で組織の問題点も出てくるわけです。
組織は問題のないところはないのですが、経営がうまくいかない、売り上げが伸びない、社員との関係性など、問題点についてきかれるんです。どうしたらうまくいきますかと言うような切羽詰まった相談です。
でも、その原因のほとんどは「経営者」「上司」側に問題があることが多いと感じます。
失礼かも知れませんが、トップの座に就かれる様な方や、上司になれる人というのは一流大学を卒業後、人生経験が少なく、大きな失敗をしないまま高い地位まで上がってこられるケースがほとんどです。
今は、昔のような隣組もない家庭環境で、親くらいしか知らずに勉強だけしてきて大人になった人が組織の重要な部分を担う立場になる。
一昔前では、社会性をもって一人前の構成員としての「大人」になっていく練習と、組織での地位の向上が車の両輪のようにバランスよく育った人が多かったのですが、今は「法律に違反してなかったらいい」とか「よそもやってるからいい」といった「嘘」を平気でついたり、罪悪感もそれほどない大人が増えてきた。
社会人常識とか、マナーとかを身に付けないまま大人になったような人が企業のトップの座に就くケースがものすごく多くなってきたように思います。
昔なら、誰も見ていなくても「神さん(神様)がみているよ」と親や年長者から聞いて育ったもので、人間以外の存在をどこかで感じて、超人間の存在や、人間にはどうしようもできない「自然」への畏敬の念を日本人は持っているはずなんです。それをもっと大切にしたいものです。

心が通じたな、と感じた経験、事例

IMG_6686それなのに、自分を超越する存在に守られているという感覚が薄れているから人間やお金がこの世のすべてという狭さしか持ちえていないところで、問題解決が見えなくなる。
すべての争いは「比較」から出てくるんですよ。「だれだれと比べて自分は・・・」「だれだれには負けたくない」「だれよりも良く見られたい」「人より多く給料がほしい、地位がほしい」とか、人と比べるから争いやストレスが起こるんです。すべて比較です。
比べることはそりゃあ終わりがないですよね。次々と比較の対象が出てくる。エンドレスです。そこしか見えてない人は負けた時に鬱になったり、自殺したりする。こんなことが一杯あって心を苦しめている。自分で自分を苦しめている。比較を止めたらいいのにやめられない。
比較をせず、もっと自然にあるがままに自分らしく生きたらもっと楽になる。自然を敬って自分ではどうしようもできないこともあるんですからね。
相談に来た人からこんな話をして「ありがとうございます」「今は元気でやっています」など便りや電話をもらった時には本当に嬉しいですよ。

みんなが丸く喜び合うホスピタリティ

1990年に鶴見緑地で「花の万博」が開催された時、私はその広報を担当しまして、大阪の新しいお土産物を開発しました。そのエピソードです。

大阪の有名なお土産というと「岩おこし」ですよね。大阪の人なら、当時はそう答えたものです。ところが、当時、花博の会場で売っている土産物というと、饅頭であろうと岩おこしであろうと、何にでもキャラクターの「花ずきんちゃん」の判子を押して売っていました。僕はそこで、ちょっと違うんじゃないかと思いまして、大阪市の土産物協会と観光協会に行って交渉を始めました。

「大阪名物って何ですか?」と尋ねてみると、「岩おこし」や「釣り鐘饅頭」、他に「つげの櫛」「数珠」「欄間」も大阪名物です、と。それを知って僕も驚きました。欄間はいくら良いものでも土産物として持って帰るには大きすぎますよね。そこで、もっとちがう、新しい大阪土産を作ろうと思ったのです。
大阪と言えば、道頓堀。僕は、「くいだおれ」「かに道楽」「づぼらや」の3社へ、「新しい大阪土産を作りませんか」という話を持っていきました。最初は皆、信用してくれませんでした。 「お店に利益は差し上げますしお店の名前はもちろん、電話番号を商品に入れて新聞に掲載して宣伝します。」と言うと広告代理店と間違われ、「集客して宣伝してくれて、なおかつお金もくれるなんてウマい話は怪しい!」と疑われたものです。(笑)
PR会社がどんな会社なのかとか、何度も何度も話をしていくうちにこちらの気持ちも理解してくれて、話が進んでいきました。結果、「くいだおれ」の人形と「かに道楽」のかに看板、「づぼらや」のフグの形のキーホルダーを売り出すことになりました。

はじめに僕は年間60万個作ろうと思っていました。そして、後日観光協会に報告にいきましたところ、「一番ヒットした大阪城天守閣のキーホルダーでも年間3,000個なのに、60万個なんて数字がどこから出てくるのか?」と言われました。 実は当時、大阪観光協会は、年間の観光客数を計算していなかったのです。観光客がどれくらい来ているのか把握できていなかった。
そこで僕は在阪のホテルに年間宿泊者数を問い合わせたところ、合計2000万人という数字が出ました。そしてその3%の60万人がお土産物を購入すると仮定したのです。
観光協会が資金を出すというところまで話は進んだんですが、どうしても60万個という数字は大きすぎると信じていただけず、最終的に観光協会は降りてしまわれました。

image弊社で売り出すことになったのですが、私はこのために様々仕掛けを考えて、いろんな形で販促を展開しました。 売り出す場所は大阪城の天守閣。売り出したとたん、あっという間に1年間で60万個売れたんです。
それを聞いた観光協会は「これは儲かる!」と思われたんでしょう、「やっぱりあの話、元に戻しませんか」と言ってこられて(笑)。
私は「それじゃ、一緒にこの事業をやりましょう!」と、共同で事業を進めました。このキーホルダーはこれまでで800万個以上売れています。
そして初めにお約束したとおり、ロイヤリティは全部、くいだおれ、かに道楽、づぼらやの3社に入っています。大阪城の天守閣の純金箔貼りのシャチホコは、そのキーホルダーの売り上げの利益で寄付したものなんですよ。

商品を売るのも、病院も一緒なんじゃないかと思うんです。
まずは、相手にとって患者さんにとって、何が必要かを考えてあげて、利益は後からついてくる。みんながうまく丸くまとまって喜び合う。そんな気持ちでなかったらだめじゃないかと思います。

従業員の高い接遇レベルを保つための教育内容

guide000000182807_1いやあ、うちの会社は僕が仕事をするんでなく、従業員が仕事してくれているんです。感謝していますよ。僕はあちこち出ていますからね、みんながいてくれるから仕事になる。教えるなんて何もしていなくても、もう僕のこともよくわかってくれているし。感謝しかありませんよ。

医療機関でホスピタリティを感じた時

そうですね、僕は残念ながら、殆ど病院には行かないんですよ・・・笑。自分で何でも治してしまうんでね。笑。

天神祭でのエピソード

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僕は大阪天満宮にも関わっているんですが、「天神さん」は全国に12,000社ほどあるのですよ。
その中で一番大きな祭が大阪天満宮の「天神祭」です。毎年7月25日に催行される天神祭「船渡御(ふなとぎょ)」は3時間で10億円使われるんです。そのお金は全部寄付。毎年10億円をすべて商売人の寄付で行われているんですよ!

3時間で集まる人数は100万人。出る屋台が3,000店ほど出ます。よく「日本三大祭のひとつ」と紹介されますけれども、「日本三大祭」の中で一番小さな祭は東京の神田祭で、だいたい20万人ぐらい。京都の祇園祭が3日間で80万人ぐらい。天神祭は、1日たった3時間で100万人が来ると言われてて、それだけでもすごいお祭りなんです。

大阪天満宮の宮司の寺井種伯さん、彼は「キリスト教」の大学の神学科を出て名字が「寺井」。それで「神社」の宮司って、ねえ、面白いでしょう。何かを「持ってる」人でね、僕の古くからの友人です。(笑)

この寺井宮司から「『天神祭のごみ掃除のボランティア募集』と書いても、ちょっとしか来てくれない。なんか解りやすい言葉で書いてくれへんか?」と頼まれました。
天神祭で100万人の出すごみが約500トンあるんですよ。そこで「ごみ掃除のボランティア募集」という固い言葉を「心のゴミ掃除をしませんか?」というコピーに変えて出したんです。そうしたら、ざっと500人ほどの応募があった。すごい効果でした。

結局、医療機関でもどこでも、理解しあうとか、分かり合うとか、って結局、相手への表現の仕方も大事なのではないでしょうか。心って一方的に発信するだけではだめで、「伝え方」次第ですよ。病院でも「言い方」「話し方」一つで患者さんて安心するんですよ。ちょっとした言い方でみんな丸くなるし、うまくいくと思います。

医療従事者へのホスピタリティに関するアドバイス

そんな、アドバイスなんてないですよ。医療とか、介護で働く人ってすごいと思います。

大阪の歴史とホスピタリティ

大阪の歴史を考えたら、1400年の歴史がありますよね。大阪の文化を見ていると、ホスピタリティについて気がつくことが沢山ありますよ。今、NHKの朝の連続テレビ小説が話題になっていますが、あの時代の商人の生活を見ていても独特の文化があるわけです。c82d845653f7ad99342116582a281a24食の文化もそうです。花外楼、吉兆、相生楼の3つの料亭は有名です。相生楼は川端康成生誕の地ですが、これも天満宮の前にあります。川端康成の生誕の地なんて知ってる人少ないかもしれないです。

それから「大阪言葉」。ユーモアたっぷりでしょう。「大阪のおばちゃんの言葉は英語に訳せない」んです。どういうことか?子どもがこけたら(つまずいて転んだら)「ほれ、見てみー」ってこれ英語に訳せます?それからまたこけたら、「何してるの、ゆうてる(言ってる)尻からそんなことして」ってこれもどう訳したらいいか不明でしょう(笑)
「熱いの熱ないの」「寒いの寒ないの」とか、「言わんこっちゃない」「よーゆわんわ」「わやや」なんて言う言葉もね。笑。訳しようがない。大阪文化に慣れていないと理解ができないです。「どこまで行かはるの?」「ちょっとそこまで」「おはようお帰り」ってこんな会話で大阪人は感覚で理解しています。ニュアンス、と意味が理解できていますよね。

大阪の言葉はこのように柔らかくて、優しくてダイレクトな表現をしないで包み込むように表現している。こんな風に船場言葉って高度で洗練された都会言葉なんです。
言葉一つでも迫った感、困った感、苦しい感じを伝えない。「あーしんど」とかね、「苦しい辛い」っていうと聞かされた方も苦しくなるけど「あーしんど」は相手の耳には優しく入っていく。本当はものすごく苦しいけど、相手にはそう聞こえないような気遣いを含んだ表現を大阪人は好んでいるのです

相手に嫌な感じをダイレクトに伝わらないような表現で、相手を気遣った言葉を使う。なぜなのか?
大阪は商人の町だからお互いホスピタリティで成立しないといられなかったんでしょう。
みんなが良い気持ちになって立ちゆくようにする、という精神が基本にある。お互いが「信用第一」。信用という目に見えないつながりでつながってたんですね。

インバウンドで今大阪にものすごい外国人が観光に来ていますが、大阪の人ってみんな親切でしょ。誰にでも良く話しかけるし、道を尋ねられても親身に応えようとします。
大阪人の中にあるホスピタリティマインドが行動になって現れるんですね。医療介護の方々にはそんな大阪人のなかにあるホスピタリティに似たマインドが生まれながらに備わった方がたくさんいらっしゃると思います。
ぜひ、これからも国民の健康と人生を守る素晴らしいお仕事ですから頑張っていただきたいと思っています。

プロフィール
氏名

伴 一郎(Ichiro Ban)

所属

伴ピーアール株式会社代表取締役PRプロデューサー
公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会理事

経歴

兵庫県尼崎市に生まれ。30歳まで尼崎市役所職員として勤務。その後、CIの専門会社、広告代理店で延べ7年間、プロデューサーとして従事。趣味は所有のヨット。

1986年 独立。伴ピーアール株式会社を設立。企業広報のコンサルティングや観光商品の企画。
大阪の定番となっている「くいだおれ人形」「かに道楽」「づぼらやのふぐ」「グリコネオン看板」など、看板キーホルダーなどのグッズ制作からプロモーションまで実施。
また、水辺の環境問題に目を向け、枯れヨシで水と大気をキレイにする紙「レイクパピルス®」を開発し、人と自然とビジネスの共存をテーマに琵琶湖淀川流域の葦を守るプロモーションに取り組んでいる。
2003年 第3回世界水フォーラムを契機として、環境にやさしい船の開発や水都大阪再生の一環として舟運事業部を設立。大阪市内河川を活用したイベントや観光船の運営を始める
2012年 リチウムイオン電池を利用した電気推進船「あまのかわ」開発。この年の「シップ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれる
2015年 「大坂の陣」から400年。記念として金箔を張り巡らせた「大阪城御座船」運航。またとない機会と人気を博す
・公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会 理事
・天神祭美化委員会 委員長
・大阪天満宮星愛七夕祭実行委員長
・NPO法人上方落語支援の会副理事長
・NPO法人町街 トラスト幹事
・大阪商工会議所文化振興委員
・ギャラクシー水文化の会評議員
・NPO法人全国街道交流会議 理事
・NHKラジオ第一放送「マイあさラジオ」大阪担当レギュラー
・光のまちづくり推進委員会委員

バックナンバー

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    神戸大学大学院経営学研究科非常勤講師
    元ANA香港支店長

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    大手前大学現代社会学部教授
    ザ・リッツ・カールトン大阪元副総支配人
    名古屋マリオットアソシアホテル総支配人
    ジェイアール東海ホテルズ元専務取締役